2011年度日本政治学会報告要旨 ― 2011年08月26日 11時14分13秒
EU政治の理論と規範モデル:マルチレベル・ガバナンスの規範パワー
EU条約が発効して、まもなく20周年を迎える。今後さまざまな場で、節目の総括が行われよう。EU政治の理論にとっても、点検作業の好機となる。これまで統合について、政体について、ガバナンスについて、いくつものモデルが彫拓され、深化拡大動向や政治機会構造や問題解決能力が考察され、対外行動の諸相に国際アイデンティティのあり方が探究されてきた。多方面にわたるEU政治の理論は、優劣善悪分かち難く結びついたEUの多面性を、余すところなく捉えることができたのだろうか。理論のバリエーションと対抗補完関係を見直しながら、個々の理論を点検して(ネジを締め直し油を差して)、認識のパフォーマンスを改善していかなくてはいけない。
本報告は、こういった節目の点検作業に携わろうと企図するものである。今回はマルチレベル・ガバナンス(MLG)論と規範パワー(NP)論を取り上げる。ねらいは2つある。一つは、説明モデルと規範モデルが一体化されてしまう場合の点検である。これは絶えず正統性が問われるEU特有の事情から、傾向としてEU研究が孕みやすく、MLG論とNP論がその好例となる。願望のEUを妄想する語彙の提供に堕してしまわぬよう、説明モデルと規範モデルが一体化していることを意識した上で、域内のEUを説明するMLG論と域外のEUを説明するNP論それぞれの、規範モデルとしての意義を吟味したい。
もう一つは 、域内のEUと域外のEUの価値規範的一貫性がシンプルに想定されてしまう場合の点検である。MLG論もNP論も傾向として、EU政体の基本構造がEUの対外行動を価値志向に走らせるはずだと理解する。越境市民公共圏を育むEUだからこそ、グローバル社会でリベラルな価値を追求するのだという論理が、両理論には見受けられる。これを批判的に突き詰めて検討し、EUを域内・外一体として評価する規範モデルのあり方を問うてみたい。
EU条約が発効して、まもなく20周年を迎える。今後さまざまな場で、節目の総括が行われよう。EU政治の理論にとっても、点検作業の好機となる。これまで統合について、政体について、ガバナンスについて、いくつものモデルが彫拓され、深化拡大動向や政治機会構造や問題解決能力が考察され、対外行動の諸相に国際アイデンティティのあり方が探究されてきた。多方面にわたるEU政治の理論は、優劣善悪分かち難く結びついたEUの多面性を、余すところなく捉えることができたのだろうか。理論のバリエーションと対抗補完関係を見直しながら、個々の理論を点検して(ネジを締め直し油を差して)、認識のパフォーマンスを改善していかなくてはいけない。
本報告は、こういった節目の点検作業に携わろうと企図するものである。今回はマルチレベル・ガバナンス(MLG)論と規範パワー(NP)論を取り上げる。ねらいは2つある。一つは、説明モデルと規範モデルが一体化されてしまう場合の点検である。これは絶えず正統性が問われるEU特有の事情から、傾向としてEU研究が孕みやすく、MLG論とNP論がその好例となる。願望のEUを妄想する語彙の提供に堕してしまわぬよう、説明モデルと規範モデルが一体化していることを意識した上で、域内のEUを説明するMLG論と域外のEUを説明するNP論それぞれの、規範モデルとしての意義を吟味したい。
もう一つは 、域内のEUと域外のEUの価値規範的一貫性がシンプルに想定されてしまう場合の点検である。MLG論もNP論も傾向として、EU政体の基本構造がEUの対外行動を価値志向に走らせるはずだと理解する。越境市民公共圏を育むEUだからこそ、グローバル社会でリベラルな価値を追求するのだという論理が、両理論には見受けられる。これを批判的に突き詰めて検討し、EUを域内・外一体として評価する規範モデルのあり方を問うてみたい。